荏原 畠山美術館
東京都
2024
港区白金台の閑静な住宅街に佇む畠山記念館は、荏原製作所の創業者である畠山一清(即翁)が収集した茶道具等の美術品を公開する為に1964年に開館した。開館60年の節目にあたり、即翁自身が監修した本館の耐震保存改修と展示環境の向上、日本美術の展示室の拡充と共に現代美術等の企画展に対応できる展示室や、新たな収蔵庫など保存研究部門の充実のために新館を増築し荏原畠山美術館として生まれ変わった。
本館は、自然光を巧みに取り入れた展示室であり、近年の美術品展示空間としては非常に珍しい。窓の外に広がる庭園を背景にして、自然光は、対象物である茶道具や古美術品を美しく魅せる。日の入りに向かう時間や雨の日の暗さ、時間と共にうつろう展示室は、本来の人間の生活の中に美術品が寄り添うように、空間が構成されている。ケースのデザインについては、空間全体が一望できるように、また自然光を美しく取り込めるように透明性の高い現代的なケースを目指した。免震装置が内蔵されているケースは、地震時の水平力を受けないために、脚部は極限まで細くすることが可能になった。また配置についても改修前を踏襲する形になっている。
さらに新館を増築し、トータルの展示面積を3倍に拡張したほか、動線計画の明確化など本館機能だけでは不十分だった機能を拡充した。展示室内は、黒漆喰の壁面を設けることで展示ケースのガラスの反射をおさえ、美術品に集中できる環境を目指した。その他にも杉本博司が見立てた坪庭や隣接する場所に来館者が集うホール、カフェや多目的室などを配置した。
即翁の考えた庭園や建築と空間に最大の敬意を払い継承し、所蔵する美術品にふさわしい格調の高い空間を目指した。
榊田倫之