回廊の家
長野県
2025
軽井沢町南原、緑豊かな敷地に約100坪の木造平屋を計画した。テラスや部屋の窓からは、四季折々の自然と景色の変化を楽しむことができる。また建築の平面構成や屋根軒先の高さを考慮して、配置や大きさが決められた3本の松が、外部に広がる自然の景色とは対照的に制御された中庭に据えられている。さながら大きな盆栽のような中庭は、外からファサードの栗材の格子戸を通して垣間見え、内部では注がれる光を通じて時間の移ろいを感じとることができる。さらに中庭をぐるりと取り囲むように廊下が配置されており、玄関からリビングへ繋がる駆け込み天井の廊下部分には、中庭の松と呼応するように現代美術作家の杉本博司がデザインした松図屏風が設えられている。柱や梁、桁など主たる部材には、栗材をやや大ぶりに扱い、駆け込み天井の化粧野地板や垂木などは赤身の杉材を用いた繊細なディテールの対比が見所となっている。
周辺の緑のなかで建築自体が大きな存在感とならないように屋根の高さを低く押さえ、また四周の軒先が低くなるように勾配屋根を注意深く検討した。屋根勾配は、積雪時に下に雪が落ちないように雪を積もらせる角度として、その緩やかな勾配と低い軒先が、建築全体の重心を低く抑えて、心地よい居住空間としてのスケールを意識した構成となっている。別荘建築の個性が際立つ軽井沢町南原のなかで、前面道路からは原野の雰囲気を残しつつ、木々に阻まれ全貌が見えないように屋根の高さも抑えながら、控えめに佇んでいる建築を目指した。
榊田倫之